題 名
日 付
2006年10月12日
概 略
再び松川事件発生現場を訪ねる。
先日、近場まで行っておきながらたどり着けなかった松川事件の現場に行ってみました。福島市で「教育基本法改悪を許さない１０．７日県民大集会」が開催されたので、その帰りに寄ってみたものです。遠いので 何か用事でもないと行きづらいのですが、帰り道 時間の余裕があったので丁度よかったと考えたものです。
場所を 再度紹介しておきます。福島市から 国道４号線のバイパスを走り、松川に来たところで「美里ガーデンシティ」という団地の看板にしたがってバイパスを降ります。立体交差でバイパスの下をくぐると すぐＴ字路になる。ここを左折し、道なりに走ると、松川事件の記念碑の上にある越線橋に出ます（この橋からは、事件現場の右カーブになった線路がよく見えます。下におりてみたら、そこからでは良く見えないことがわかりました）。橋を渡ると、団地になりますが すぐ左手に入る道があって、ここから左折。団地を抜けたあたりで 左に田圃に降りる道がわかれますので、ここを入るとすぐに「石合踏切」に出られます。
踏み切りを渡ったらすぐ左手に入る小道が分かれますので、ここにはいると３００メートル程度で「謀略忘れまじ」の石碑に前に出ます。この分岐点からは越線橋が見えますので、すぐにわかると思います。
右上の写真は、松川記念塔公園を見たものです。入る道がわかえらず、田圃のあぜ道を歩いて行きました。丁度稲刈りも済んでいたので助かりました。中央の塔が「松川の塔」と言われるものです。この塔の後ろが東北本線の上りの線路になります。（今回の写真は携帯にて撮影したものなのですが、「謀略忘れまじ」の石碑を撮影した写真が取り込みの時の手違いで消えてしまいました。残念です）。「謀略忘れまじ」の石碑はこの反対側、線路との間の部分にあります。御影石で作られた石段を登って石碑の前に立ちます。高さ３メートル、横５メートルぐらいの石碑には 以下のような文字が刻まれています。
謀略わすれまじ松川事件
時代の色に染まらない。時の流れに流されない。それは理性に導かれた民衆の抵抗を意味する。
権力者は民衆の犠牲の上に君臨し「国家・国民のため」と大うその御託宣をくだす。
法律を支配者のために作り、都合よく解釈し、国家の暴力装置としての軍隊・警察等を使い、公然たる弾圧、抑圧をくりかえす。
さらに非公然の不法の攻撃をしかける。
権力側に与しない者は、それを謀略と規定する。権力の広報部になり下がったマスコミは「過激派のしわざ」と煽り立てる。
この松川で何者かが列車を転覆させた。
三人の機関車乗務員が尊い生命を奪われた。敗戦をへた日本の夜明けは、暗黒の道へ引きもどされた。この一九四九年、共産党の「九月革命説」は権力側に利用された。
松川謀略から五〇年、日本は新たな戦前史を形成した。平和憲法は瀕死の状態にある。デッチ上げられ、死刑判決まで受けながら一五年間の不屈の闘いを勝ち抜いた先輩達に最大の敬意を捧げ、犠牲者の冥福を祈り、平和の誓いも新たに五〇年碑を建立する。一九九九年三月八日
東日本鉄道労働組合
会長 松崎 明
今から七年前に建立されたこの「謀略わすれまじ」の碑文は、今読んでも古臭い感じはしない。むしろ、今こそこの言葉の意味をかみ締めるべき時代なのではないだろうか？北朝鮮の核実験で、アメリカ側が恐れるのは 西太平洋の一帯（具体的には日本の事を指すらしい）も、核武装をする事態だそうだ。しかし、今 この日本で核武装など許されるものではないし、私は絶対に許さないだろう。日本が 核ミサイルで攻撃されれば一千万人もの犠牲者が出る可能性があると言う。あの、広島・長崎の悲劇は絶対に繰り返してはならない。安倍政権のように強行な態度をとれば、必ず日本は実際に狙われるであろう。
それなら、どうすれば良いのか。と思われるだろう。あくまで話合いで進めるべきではないのか？そして、それが広島・長崎を持つ国の宿命であり、義務なのではないか？核兵器の持つ威力とその悲惨さを言える権利があるのは 世界広しといえど日本だけなのだ。声を大にして「戦争の放棄」を叫ばなければならない。
「松川の塔公園」の方は、 広い階段の奥が２０畳程の広場になっていて、その中央に左の写真の大きな塔が建っている。
この手前には東屋があって 休憩できるようになっているが、訪れたのが四時過ぎなので今は誰もいない。公園自体は「松川運動記念会」というところが管理しているらしく 草も丁寧に刈られているので 季節の良い時期には人の訪問もあるだろう。
塔の左手には 松川事件の支援者の方々が一言を刻んだ石が（大きいものでも１０センチ程度のもの）１メートル四方の場所に展示してある。多くの人々の支援の手が 松川事件で検挙された人達を救う為に差し伸べられた事実とその思いが、この場所に詰まっているのをひしひしと感じる事ができた。
松川事件は、何者かの手によってしくまれた列車の転覆事件であった。そして、その真犯人は今でも捕まってはいない。多分、これから先も捕まることは無いだろう。ただ、言えるのは 警察によって捕まえられ獄に繋がれた人達は 無実の罪をきせられた被害者だったという事のみだ。犯人として捕まえられた人達の１５年という時間は 取り戻せない。国家による犯罪行為と言っても言い過ぎではないだろう。同じことが、今後は発生しないのだろうか？私達は、同じような事件が起きた時、真実を見抜く目を持ち合わせているのだろうか？
「教育基本法改悪を許さない１０．７日県民大集会」では、講師として「佐高 信」氏の公演があった。佐高氏は 「権力者のうそは許されない。しかし、私達はそういった権力に対しては うそをつく事・疑う事・逃げる事で闘うしかない」と、強調されていた。私達は、何が信実なのかを見極める目を持たねばならない。そして、権力と闘う姿勢を常に持ち続けなければならない。松川事件の教訓を忘れないようにしたいものだ。この松川の碑には 以下のような文が書かれている。
松川の塔
１９４９年８月１７日午前３時９分 この西方２００米の地点で、突然、旅客列車が脱線顚覆し、乗務員３名が殉職した事件が起った。
何者かが人為的にひき起した事故であることが明瞭であった。
どうしてかかる事件が起ったか。
朝鮮戦争がはじめられようとしていたとき、この国はアメリカの占領下にあって吉田内閣は、二次に亘って合計９万７千名という国鉄労働者の大量馘首を強行した。かかる大量馘首に対して、国鉄労組は反対闘争に立上がった。
その機先を制するように、何者かの陰謀か、下山事件、三鷹事件及びこの松川列車顚覆事件が相次いで起り、それらが皆労働組合の犯行であるかのように巧みに新聞、ラジオで宣伝されたため、労働者は出ばなを挫かれ、労働運動は終に遺憾ながら十分なる反対闘争を展開することが出来なかった。
この列車顚覆の真犯人を、官憲は捜査しないのみか、国労福島支部の労組員１０名、当時同じく馘首反対闘争中であった東芝松川工場の労組員１０名、合せて２０名の労働者を逮捕し、裁判にかけ、彼等を犯人にしたて、死刑無期を含む重刑を宣告した。この官憲の理不尽な暴圧に対して、俄然人民は怒りを勃発し、階級を超え、思想を越え、真実と正義のために結束し、全国津々浦々に至るまで、松川被告を救えという救援運動に立ち上がったのである。この人民結束の大きさは、日本ばかりでなく世界の歴史に未曽有のことであった。救援は海外からも寄せられた。
かくして１４年の闘争と５回の裁判とを経て、終に１９６３年９月１２日に全員無罪の完全勝利をかちとったのである。
人民が力を結集すると如何に強力になるかということの、これは人民勝利の記念塔である。
黒御影で作られた松川の塔の碑文に触れてみた。ひんやりとしていたが確固とした重みがそこには確かにあった。
